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エージェンシーの安全な海外就労に対する取り組み

第 4 章 エージェンシーの安全な海外就労に対する取り組み

前章で、フィリピン人海外労働者の職を得る方法には正規ルート、非正規ルートの 2 つ あることを述べた。正規ルートとは国内のエージェンシー、或いは海外雇用庁(POEA)に 申請する事、非正規ルートとは visitor visa で渡航して渡航国の会社に直接申請することで ある。

では、外国人雇用主及びエージェンシーはどのような採用プロセスがあるのだろうか。この章では、第一にエージェンシーの採用プロセス及び法制度、第二にエージェンシーの抱える問題及び労働者がトラブルに巻き込まれた場合の取り組みを紹介していく。

4.1 採用プロセス 

フィリピン人海外労働者を主に取り扱っている組織は、雇用労働省の管轄下に設置されているフィリピン海外雇用庁(POEA)および海外労働者厚生庁(OWWA)という行政機構で ある。(海外職業訓練協会,2009,p.1)

フィリピン人労働者の採用は体系的な雇用ネットワークにより行われるが、この場合、 外国人雇用主は、人材の必要条件を POEA(Philippines Overseas Employee Agency :以下POEA)認可の民間雇用・人材斡旋会社を通して申請書を提出しなければならない。 フィリピンで認可を受けた会社は地方紙に人材募集広告を出し、外国人雇用主に対するサ ービスの一環として応募者の予備的な選考やインタビューを行うことができる。

人材斡旋をしてくれるフィリピンの機関を決定した雇用主は、最寄りのフィリピン大使 館/領事館内のフィリピン海外労働事務所(Philippine Overseas Labor Office:POLO)に確認の書類を提出しなければならない。

民間の採用機関は、労働者の採用・派遣に行われるサービスの支払いとして雇用主から サービス料金を請求する。 雇用主はPOEA手続料 20万ペソ、海外労働者福祉庁(Overseas Workers Welfare Administration:OWWA)への労働者会員料金 25米ドル、ビザ料金 の コストも支払う。 民間の採用機関は、雇われた労働者から1カ月の給与と同等の紹介料金 を徴収することができる。ただし、法律でそのような料金を労働者から徴収することを禁 じている国は除く(海外職業訓練協会,2009, pp.7~9)。

4.2 法令及び制度 次に労働法にある海外雇用に関する規定について説明していく。まず、労働基本法は海外雇用に関する事項を含んでおり、これらは労働法第 1 巻の第 1 分冊、特に第 1‐3 章にあ る。大統領令第 442 号は労働法、社会法を 1 つにまとめたもので、一応労働を保護し、雇 用と人材開発を促進している (海外職業訓練協会,2009, p.23) 。

その次に海外就労に重要な法律とされるのは、1995 年出稼ぎ労働者と海外フィリピン人 に関する法律(共和国法第 8042 号)(Republic Act No.8042, Migrant Workers and Overseas Filipinos Act of 1995)である。この法律は海外雇用政策を制度化し、出稼ぎ労働者、その家族、及び困窮している海外フィリピン人の保護と福祉の推進に関して設定する ものである(海外職業訓練協会,2009, p.23)。

法令以外の制度として、フィリピンは 84 カ所の大使館・領事館、37 カ所のフィリピン海 外労働事務所(POLO)、及び 20 カ所のフィリピン労働者リソースセンター(Filipino Workers Resource Center:FWRC)を持っている(海外職業訓練協会,2009, p.23)ので、 フィリピン人が渡航する 193 カ国中 84 か所に「駆け込み寺」があることになる。

しかし、フィリピン政府は「95 年法」(移住労働者と海外フィリピン人に関する 95 年法) のような様々な政策を講じても、バーゲニングパワー(交渉力)が無いため結果がともわ ない(小井土,2008, p.390)のが現状である。

4.3 エージェンシーが抱える問題

前章では legal agency を選んだ人より illegal agency を選択した人の方が、渡航先でトラ ブルがあった人数が多いという結果になっており、legal agency を選択してもトラブルを 防げない事になっている。これは何故であろうか。

A さんは legal agency に申請したが、placement fee をそのエージェンシーに持ち逃げさ れた。「Agency のある人に placement fee(16 万ペソ)を渡しても一向に仕事を紹介してもら えない。渡した人はいなくなってしまい、別の人に尋ねても仕事を結局紹介して貰えなか った。」

とあるエージェンシーで勤めている男性へのインタビューによれば、このような事が起きた原因は「エージェンシーの人手不足」にある。彼によれば、「エージェンシーにあまりに申し込む人が余りに多過ぎて、自分の勤めているエージェンシーでは人手不足が起きて いる。また、legal agency は年 1 回か POEA(海外雇用庁)に申請し直さなくてはならな いし、またその審査も厳しいので自分が勤めているエージェンシーは POEA の license が 下りていない。自分たちと同じように、POEA の license なしで営業するエージェンシーも 増えている。」と、正規エージェンシーになることの難しさを伝えている。

そして図 4-3 は 2007 年におけるフィリピン国内にあるエージェンシーの現状を表したも のである。POEA から認可が下りたエージェンシーは年に一度、POEA にエージェンシー として認定を受ける為の手続きをしなくてはならない。エージェンシーが legal agency と して機能しているのは 3,168 社のうち 1,431 社であった。他の 1,737 社のエージェンシー は政府から何らかのペナルティを受けており、まともにエージェンシーとして機能してい るのが約 3 分の 1 であることが分かる。

前章のインタビュー調査では、legal agency を選ぶ人より、illegal agency を選択した人 の方が、トラブルが無かった人が多いことが判明した。この理由は 2 つある。1 つ目はフィ リピン人の殆どは出稼ぎに行く際エージェンシーに申し込むが、エージェンシーは儲けた いので申し出を断るわけにはいかない。結果、「エージェンシーの人手不足」が起こりやす く、legal agency を選択しても労働者にぞんざいな対応を取る場合がある為である。2 つ目 の理由はエージェンシーを選択して、労働者がトラブルに巻き込まれてエージェンシーが 対応をしなくても、フィリピン政府がその事を認知出来ないのでエージェンシーがトラブ ルに対する措置を取るモチベーションが無いからである。

4.4 エージェンシーの労働者に対するケア 

それでは、エージェンシーは、フィリピン人海外労働者がトラブルに巻き込まれた場合、どのような対処を行っているのであろうか。2 か所の POEA licensed agency(フィリピン 国内)にインタビューを行った。

エージェンシーA(POEA licensed agency) は 25 歳~40 歳の中国と台湾のベビーシッター と介護士の募集を行っている。月に 10~20 人の OFW を送り出している。申請の条件は英 語を話せること、協調性がある事のみで、就業経験ゼロでも申し込める。

申請者は(1)面接、(2)書類提出、(3)Visa の取得(パスポート取得代行 3600 ペソ)、(4)オリ エンテーション、(5)POEA に最終申請 (6) Placement fee 支払い81(9000 ペソ(現地での1 ヶ月分の給料)を経なくてはいけない。また、(1)~(6)まで短くて 2 週間から長くて 1 年か かるという。「もし現地先でトラブルが起きて対応しきれなかった場合についてはフィリピ ン人労働者に別の場所の仕事を紹介する」と答えている。さらに、「契約内容と仕事が異な った場合はフィリピン人労働者に電話させ、アドバイス。事態が収容しなくて台湾まで行 ったこともある。」としている。

エージェンシーB は月に 30~40 人の OFW を送り出している。申請者は(1)面接、9000ペソの processing fee の支払い82(2)健康診断(3)Visa の取得 (4)POEA にも最終申請 (5)オリ エンテーションを経て、2 年間働く。メイド等の専門性が必要としない仕事は基本的な英語 が話せて、高卒であることが申請の条件であり、一方機械工のような専門性が必要とされ る仕事に就くためには、学士の学位、就業経験、そして英語が流暢に話せることが必要と される。

エージェンシーの職員曰く、「今まで外国人雇用主に契約書と違う仕事をさせられた」、というような労働者がトラブルを経験したという報告したことは無かったようである。 このように POEA licensed agency の場合、フィリピン人海外労働者がトラブルに巻き込まれた場合、ある程度対処できるという事が伺えるが、今回の調査では限られた時間で しかエージェンシーにインタビューをすることが出来ず、illegal agency が労働者に対して どのようなケアを行うかについては言及できなかった。