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人生を制限させないADHD・うつ病

ADHD・うつ病に関するブログです。【たまにフィリピン留学の事も書きます】

スラム街出身のフィリピン人海外出稼ぎ労働者の安全な海外就労に対する考察

第 1 章 序章

1.1 背景と目的

フィリピンは労働送出国世界第 3 位の国で、総人口の 10%が海外にいる。 2007年12月末で870万人のフィリピン人が海外におり、そのうち410万人が臨時雇い用者、90万人が正式書類のない、または非正規雇用の状態にあり、残りが永住者、または移民で ある。海外フィリピン人は世界約193の国と地域に住み、働いている。毎日、3,000人近く の男女が出国し、出稼ぎ労働者となっている(National Statistics Office,2008,p.3)。

非正規フィリピン人海外労働者には海外労働庁(POEA)からの労働認可が下りていない ため、人権が保障されず、渡航先で様々なトラブルに巻き込まれていると言われている(青 木,2009)。1991 年 5 月フィリピン人家事労働者とその雇い主の子供が殺される事件をきっ かけに家事労働者の保護に関する問題がフィリピン国内で問題視され始めた。その後、「95 年法」(移住労働者と海外フィリピン人に関する 95 年法)が発布されたが、国内法に過ぎ なかった為実効性を確保することができず、現在も政府にバーゲニングパワーが無いので、 海外就労者の保護政策を立てようとしても、各国の政府と上手く交渉が出来ない。結果、 フィリピン人海外就労者が渡航先で何かしらのトラブルに巻き込まれても、救済措置が取 ることができない。そのため、フィリピン人が海外にてトラブル無く海外で働くにはフィ リピン人個人が何かしら対策を取らなくてはいけないのが現状である。

しかしながら、フィリピン人出稼ぎ労働者が渡航前に自身が渡航先でトラブルに巻きこまれない為に事前にどのような対策をしているのか、またどのような行動が安全な出稼ぎ労働に対して効果的なのかという事についての研究は殆ど見られない。

本研究はこうした背景のもと、マニラ首都圏にあるナボタスサント・サントニーニョという海外に出稼ぎに行く人が多い貧困地区を対象に、過去に出稼ぎに行った事がある人の「渡航前の行動及び労働者の個人属性」及び「コミュニティ内のネットワーク」と、実際渡航先におけるトラブルの有無の関連性を分析した上で、出稼ぎ労働者はどのような対策を講じれば、トラブルの無い海外就労を行うことが出来るのかを明らかにすることを目的としたものである。

1.2 論文の構成

次に、本稿の流れを説明する。第 2 章ではフィリピン人出稼ぎ労働者に関する主な研究 を紹介する。フィリピンの労働力移動はどのくらいの規模なのか、そして何故多くのフィ リピン人が海外に向かうのか、さらに、フィリピン人海外労働者はどのようにして職を得 て、どのような環境下で働くのか、その一連の流れ、の各点についてを既往研究はどこま で明らかにしており、また明らかにしていないのか説明する。

第 3 章ではナボタス町サント・ニーニョ村出身で、過去に出稼ぎに行った事があるフィ リピン人を対象としたインタビュー調査の記述から、既に出稼ぎに行った事があるフィリピン人海外労働者がどのような手段を経て海外就労を得たのかを説明する。

さらにフィリピン人海外労働者の個人属性、渡航者が所属するネットワーク、出稼ぎに関するメディアを通じた情報収集、及び渡航形態の選択渡航先が、トラブルのない出稼ぎ労働にどのように繋がっていたのかを明らかにしていく。

第 4 章では、正規エージェンシーと非正規エージェンシーそれぞれにインタビューを行 い、フィリピン人海外労働者が渡航先でトラブルに巻き込まれた場合、どのようなケアを 行っているのかを明らかにしていく。

第 5 章では、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に在留特別許可などを待ちつつ 収容されているでフィリピン人海外労働者を対象としたインタビューの内容を纏めている。

最後に、過去に出稼ぎに来た者、現在入管で収容されている者、出稼ぎ労働者を扱うエ ージェンシーという 3 者の実態を勘案し、フィリピン人出稼ぎ労働者が安全な海外就労を 行うにはどうすれば良いのか提案を行う。